東南アジアのペット市場からみる日本のペット市場の可能性

2024年06月24日

  • Interview

ペット産業で活躍する経営者や専門家をゲストに招き、日本の動物医療やペット産業の現状と今後について、セミナー形式でヒアリングを行うインタビューシリーズ。
国内では飼育頭数が減少し、苛烈な市場環境に変化していくことが想像される中、我々が取るべき市場の判断と今後の施策とは。これからの現状判断と市場展望を中心に展開していきます。
(一部中国語でのインタビューでしたが、日本語に翻訳して掲載しています)


生田目:本日は台湾を中心として、アジア各国から欧州まで幅広くペットビジネスを展開する、鐘鎧璜(Michael)社長にお越しいただきました。Michael社長は、今年のインターペットでもアジアのペット市場に関してご講演いただきました。
弊社QIXともお付き合いいただいているMichael社長に、現状のアジア圏のペットビジネスと日本の可能性に関してお伺いしたく思います。Michael社長、よろしくお願いします。

Michael:どうぞよろしくお願いします。

生田目:それでは、私からMichael社長について簡単にご紹介させていただきます。
台湾で生まれ、カナダに留学、台湾でペットフードおよびトリミングサロンで使用するデバイスやシャンプーを中心にトリミングサロンや動物病院への販売代理店業務を行っています。魅力的な製品を見つけ出し、現地に合わせたプロモーションで展開することを得意とされています。
また、Michael社長は中華民國寵物食品及び食品商業同業公會の理事も務められています。



Michael:ご紹介ありがとうございます。

生田目:実は、Michael社長とは2015年の台湾のペット展示会で初めてお会いしてから、9年間ビジネスとして経営者としての個人的にもお付き合いをさせていただいています。ビジネスの話は多くしていますが、このように改まってお話しする機会は少なかったので少し緊張しますが、自由にお話しさせていただきたく思います。
改めまして、アジア圏のペット市場の状況についてのお話をお伺いさせてください。
よろしくお願いします。

Michael:こちらこそ、よろしくお願いします。

生田目:ではまず、ペットビジネスの基本となるペットの飼育頭数に関してお伺いさせてください。
日本では、ペットブーム以降年々、特に犬の飼育頭数が減少しています。アジア圏ではどのような状況ですか?



Michael:今回は、自分が主にビジネスを行っている台湾・タイ・フィリピン・インドネシアの情報を日本と比較してお伝えします。
ご存じの通り日本でのペット飼育頭数は1,600万頭(犬680万/猫900万)と言われています。
現状の数値だけで言えば、台湾では、217万頭(犬・139万頭/猫・78万頭)、タイ1,220万頭(犬890万頭/猫330万頭)、フィリピン3,030万頭(犬1,810万頭/猫1,120万頭)、インドネシア3,980万頭(犬630万頭/猫3,350慢万頭)となっています。
日本の飼育状況と最も近い国は台湾ではないかなと思っています。東南アジアにおける最大のイスラム国であるインドネシアでは、犬の数が極端に少なく猫が多いのが特徴的です。
タイでは、少子高齢化と共にペットの頭数が増加しています。ただ野犬・野良犬の問題は根深くあることが特徴的です。フィリピンもペットの飼育頭数は急速に増えていますが、法規制等も十分ではなく、
ただ、タイ・フィリピン・インドネシアではペットの飼育頭数は毎年増え続けています。



生田目:日本の場合は少子高齢化や飼育環境の影響もあり、犬の飼育頭数は減少していますが、台湾も同じような環境なのですか?

Michael:はい。台湾の65歳以上の高齢者割合は17%と、日本の29%に比べると未だ低い数値です。
しかし、急速な高齢化が予想されており、2060年には40%を超え日本を超える高齢化割合になると言われています。
また、台湾都市部でのマンション価格は世界3位で、急速に不動産価格が高騰しています。
飼育しづらい環境という意味では日本と非常に近い状況です。

生田目:そうなんですね。動物病院などのペット施設はどのような状況ですか?



Michael:台湾は大体日本の市場の10分の1程の件数・規模で見ていただければわかりやすいかと思います。
獣医療品質もトリミングのスキルも、日本からはもちろん欧米からの情報も取り入れて年々質が上がっています。
タイでは、ペット保険の加入率向上とともに毎年8%程度の勢いで動物病院市場もトリミングサロン市場も規模拡大しています。フィリピンはペットの売買が中心で、医療や美容のサービスは十分ではありません。
インドネシアは先ほど申し上げた通り、猫が中心の市場ではありますが、全体的に発展しています。ただ、2023年にペットショップに対する規制を設定して、ペットショップでのトリミングが出来ないなどの規制が強化されました。こちらが今後市場に影響することが考えられます。



生田目:仕事でも各国に行く機会はありますが、数年経つと大きく街並みが変わっていることが成長国・新興国での特徴ですね。その中で日本から商品やサービスを提供する場合、どこの国にどんな期待をもって輸出するのかが重要ですね。実際に日本の市場と東南アジアの市場はどのような違いがありますか?

Michael:それでは、「ビジネス上の差異」「流通上のポイント」「マーケティング上の特徴」の3点についてお伝えします。
ビジネス上の差異として、大きく国民性の違いがあります。具体的には、日本では長期的な関係性・信頼の構築・対面での交流を重視します。勿論、コロナ禍で生活環境を含めてビジネス感覚も変わった点はありますが、基本的には契約条項だけではなく長く安定した関係性を作る事に基づいた関係構築を行うことが多いです。その他の国では、契約や短期的な成果を重視します。プロジェクトや契約が絶対ですので、協力体制もそれに基づく必要があります。



流通上のポイントとしては、日本では基本的に代理店やパートナーを通じて行われます。近年はE-CやD2C企業のような形で参入される方もいらっしゃいますが、飼い主様からすると動物病院や専門店への信頼が高い為、製品やサービスの品質やサポート、説明を目的として流通を使用することが多いです。その他の国では、オンライン販売のプラットフォームを用いて参入される場合や、現地子会社を設立して参入するパターンが多くみられます。
マーケティング面では、日本では感情的なつながりやブランドストーリーが重視される傾向にあります。地域による違いも多い為、ローカライズされた戦略およびコンセプトが使用されます。また、総じてソーシャルマーケティングや口コミが有用な印象です。逆に他の国々では、デジタルマーケティングやグローバルに統一されたマーケティング戦略を重視する傾向にあります。



生田目:日本だけでビジネスをしているとわかりにくい部分もありますが、海外で交渉をすると「まさに」と感じるポイントですね。
実際に日本の市場は難しいのですか?

Michael:はい。正直難しい部分はあると思います。
文化と法律規制を含めて、飼い主(最終購入者)と動物病院や専門店(流通購入者)の嗜好や意向を知る必要があります。
日本企業でも同様とは思いますが、信頼できる代理店を選定することや他に協力できるメーカーとの連携は非常に重要です。
ただ、日本市場での発展やブランド醸成により、海外に対しての安全基準や品質の信頼性に繋がります。
テストケースとしての日本市場参入に挑戦しながら、別の国でも挑戦し続けている企業が多いのもポイントです。

生田目:ありがとうございます。
それでは、最後にこの対談を見ていただいている方に一言お願いします。



Michael:日本市場への参入はハードルが高く、非常に難しいです。
逆に、海外には成長幅の広い国や地域はまだまだあります。
日本のブランドは海外でまだまだ通用します。
日本での商品とサービスの質を最大限に高めて、対象地域のリサーチをしっかりと行うことで是非とも海外展開に挑戦してください。